無垢な瞳
結局ケンからの電話があったのは四時を過ぎてからだった。
「はい、長谷川です」
「アキ?」
懐かしいケンの声だった。
「ケン?大丈夫なの?」
久しぶりに聞くその声は、アキの心に嬉しさと気恥ずかしさを呼び起こした。
「うん、大丈夫。アキは?」
「いきなりいなくなっちゃってさ、ひどいよ」
照れた気持ちが、強い言葉となって口から飛び出した。
本当は、もっと優しい言い方をしたいのに‥‥。
「ごめんな。心配かけて」
ケンの声がアキの心に染み入る。
素直に謝るケンの言葉がアキの心をゆっくり溶かした。
「クラス発表の喜びもそこそこにいなくなっちゃったから、みんなとっても心配して。でも、芝山も詳しいことはなんにも言わないし、ケンは転校しちゃうって言うし‥‥」
「母さんが自殺したんだ。それは聞いた?」
ケンは意外なほど落ち着いた声で「自殺」という忌まわしい言葉を口にした。
「芝山はそういう言い方をしなかったけど、そういう言葉は耳に入ってきた」
アキはできるだけ冷静に真実を伝えようと思っていた。
それがケンを慰めるいちばんの方法だとわかっていた。
「そうだろうと思ってた」
ケンはどんな顔をしてそんなことを言ってるのだろう。
「前にさ、父さんのこと話しただろ?」
「うん、覚えてる」
「母さんも父さんも、うちのじいちゃんばあちゃんを裏切ったんだよ。だから、俺は何も言える立場じゃないんだ。じいちゃんに意見することなんかできるわけない」
「はい、長谷川です」
「アキ?」
懐かしいケンの声だった。
「ケン?大丈夫なの?」
久しぶりに聞くその声は、アキの心に嬉しさと気恥ずかしさを呼び起こした。
「うん、大丈夫。アキは?」
「いきなりいなくなっちゃってさ、ひどいよ」
照れた気持ちが、強い言葉となって口から飛び出した。
本当は、もっと優しい言い方をしたいのに‥‥。
「ごめんな。心配かけて」
ケンの声がアキの心に染み入る。
素直に謝るケンの言葉がアキの心をゆっくり溶かした。
「クラス発表の喜びもそこそこにいなくなっちゃったから、みんなとっても心配して。でも、芝山も詳しいことはなんにも言わないし、ケンは転校しちゃうって言うし‥‥」
「母さんが自殺したんだ。それは聞いた?」
ケンは意外なほど落ち着いた声で「自殺」という忌まわしい言葉を口にした。
「芝山はそういう言い方をしなかったけど、そういう言葉は耳に入ってきた」
アキはできるだけ冷静に真実を伝えようと思っていた。
それがケンを慰めるいちばんの方法だとわかっていた。
「そうだろうと思ってた」
ケンはどんな顔をしてそんなことを言ってるのだろう。
「前にさ、父さんのこと話しただろ?」
「うん、覚えてる」
「母さんも父さんも、うちのじいちゃんばあちゃんを裏切ったんだよ。だから、俺は何も言える立場じゃないんだ。じいちゃんに意見することなんかできるわけない」