無声な私。無表情の君。
楽しいようで、大変で、短いようで、長かった下校も、もう終わり。
昨日と同じでちょっと切ない。
でも、明日もあるってわかってるだけで安心感があった。

気づけば私の家に着いていた。
メモ帳の12ページぐらいかな?

【さようなら】

開いて見せた。
きっと康介も今の私と同じ気持ちなはず。
離れたくないんだよね。
でも、一緒にいればいるほど別れが辛くなるのを私は知っている。
昨日、康介に教えてもらったから。
早く帰って……。
この気持ちが大きくなる前に……。

スッ

康介が制服の胸ポケットから紙切れを取り出した。

「これ、俺のパソコンのメアド。いつでもいいから連絡して」

コク

紙切れを受け取る。
まじまじと見たかったけど、まずは見送らないと。

「じゃあ、またな…」

声が出てたら100%「待って!」って言ってたと思う。
苦しい。
ただそれぞれの家に帰るだけなのに。
それだけのことが苦しくてならない。
笑顔で見送る。
無理矢理笑う。笑わなきゃ。
恋を楽しまなきゃ。
自分に言い聞かせるように思った。

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