冷血上司の恋愛論
田所が口篭ったのを確認しながらも、俺は俺で混乱していた。


「藤井、『Dreamホーム』にいたのか?」


「はい。黙っていて申し訳ありません」


今度のは使える―――その意味がわかった。


そして、うちに来た理由も。


『Dreamホーム』は、正反対の建設会社だ。個人住宅のみを扱い、細かい要望に応えるため一生に一度の住宅を時間をかけて提供している。ライバル会社ではあるが、時には共に互いの会社をクライアントに提案することもある。


「田所さんが藤井と初対面でないことはわかりましたので、早速、本題に入らせてもらってもいいですか?」


まず机上に幾つかのヒアリングシートを用意した。


ある程度は聞いているが、此処からは細かいことを決めていかなければならない。


今ある店をどこまで利用していくかによってもコストが変わってくる。


俺の質問に、ポツリポツリと答えていく田所だが何かが足りない。


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