冷血上司の恋愛論
「頑張ったな。あかの他人ではなく上司と部下になってしまったけれど、泣きたかったら泣けばいい」


強がらなくていい。
泣きたければ泣けばいいし、怒りたければ俺に八つ当たりすればいい。


目を丸くして頷くと、俺のとなりに並んだ。


海を見ながら、静かに肩を震わせる。


「バーカ。何の為にここに来たと思ってる。胸でも肩でも貸してやる」


グイッと引き寄せて、胸に閉じ込めた。


抵抗するかと思ったが、両手を腰にまわして、泣き出した。


ったく、こんな状態にしやがって!


沸々と田所に怒りがこみ上げてくるのを、押さえるように藤井の髪を撫でていた。


ヤバいな、俺。


社内恋愛するつもりはなかったけど、藤井だけは、誰にも渡したくないと思ってしまう。


傷心につけ込むような真似はしたくないが、このまま俺の手を取ってくれないかと真剣に考えていた。
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