冷血上司の恋愛論
「ハハ、昔から優柔不断なんで、打ち合わせ大事にしないと、いろいろ苦労させられるかもしれませんよ」


運転中で顔を見れないが、容易に藤井の顔、想像出来る。


こんな時でも仕事のことを考えて、馬鹿じゃないか!


社に向けて走らせていた車の行き先を変えた。


「ちょっと一件寄りたいから付き合ってくれる?」


俺も馬鹿だ。通常ならあり得ないことをしている。


「え?はい。アッ、でも此所からならそう遠くないので降りて自分で戻りますよ。何処かで停めて下さい」


「無理」


俺は、問答無用で却下して、でも…と戸惑っている藤井を、海の見える場所まで連れて行った。


海岸線の資材置き場。仕事でもお世話になる場所だが、その近くに人が殆ど入ってこれない場所がある。


車を資材置き場の駐車場に止め、藤井を連れ出して歩きだした。


少し荒い波の海。強い潮風が海独特のニオイを運んでくる。


防波堤まで来た俺は、訳もわからずついて来た藤井に振り返った。





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