ぼくたちはあいをしらない
 時はゆっくりと流れる。
 禍々しいシューベルトの音楽にも聞き慣れた茂は毎日のようにゆかりの元へと訪れた。

「茂くん、毎日来てくれるのは嬉しいけれど……
 お友だちと遊んだりはしないの?」

 ゆかりの質問に茂の表情は少し暗くなる。
 すると美楽が、優しい口調で茂に尋ねる。

「友だち出来たんじゃないの?
 中居くんと斎藤くんだっけ?」

「友だちだったけど……
 そうじゃなくなった」

「どうして?」

 美楽の問いに茂の表情はますます暗くなる。

「麻友ちゃんの件があった後から中居くんの態度が余所余所しくなったんだ。
 もう友だちみたいな関係に戻れないのかな……」

「そっか」

 美楽は、深くは聞かなかった。
 一般人が能力者と関わって能力者の恐怖を感じ離れていく……
 そういうことはよくあることだったからだ。

「……よーし。
 じゃ、今日はお散歩しよう!」

 ゆかりが、そう言うと茂が声を出す。

「お散歩?」

「うん。
 公園に行こう」

「公園は危ないよ!
 ボールとか飛んでくるし……」

「じゃ、茂くんに護ってもらう。
 盾になってね」

 ゆかりが、そう言って笑うと茂がため息をつく。

「小学生を盾にするの?」

「あら?小学生もお爺ちゃんも男の子は女の子を護るナイトにならないとダメなんだよ?」

「わかったよ。
 ボールに気をつけてお散歩しよう」

 茂は、根負けした。
 そして、美楽と茂は、ゆかりと共に公園に向かった。
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