ぼくたちはあいをしらない
 一樹は、ゆっくりとナイフを振り上げる。
 そして動けない仲間をひとりまたひとりと刺していく。
 首、膝、腹…‥
 一樹は、涙を流してこう言った。

「なんなんだよ!
 体が勝手に……」

「君、ギフトって知ってる?
 いや……温室育ちの君は、知らないだろうね……
 ギフト能力者の喜びが……
 そして、わからないだろうね。
 弱者のつらさが……」

 風舞が、そう言ってゆっくりとその場に座った。

「わかった。
 もう二度と悪いことしないから許してくれ……」

 一樹が、そう言うと轟が笑う。

「こんなこと言ってるが、どうする?
 信じて許してやるか?」

 轟の言葉に一樹に安堵の表情が浮かぶ。

「轟さん。
 何言っているの?
 こいつらは、犯したんだよ罪を……
 数えきれないほどの罪を犯しているはずだよ。
 カツアゲとかね。それに今だって十分な銃刀法違反だしね」

「だから、次からは……」

 一樹の目に涙が浮かぶ。

「苦しめられてきた人に次はないんだよ?
 わかっている?」

 風舞は、そう言うと別の少年の方を見た。

「さぁ、今からこの場にいる人全員殺すんだ。
 僕らは、これで帰るけど……
 ちゃんと全員殺すんだよ?
 あと最後は自分で死ぬこと……
 これ約束だからね」

 風舞が、そう言って一樹に背を向けイアフォンを耳に戻した。

「うは、相変わらず残酷だねー」

 轟も一樹に背中を向けた。

「で、轟さん僕になんか用?」

「ああ、タネ様がお呼びだ」

「そう……
 じゃ、帰らなくちゃだね」

「ああ。
 俺らの家にな……」

 ふたりは、一樹たちの悲鳴が聞こえる中、その場を後にした。
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