ぼくたちはあいをしらない
08:しゅうえんのひび
――数日後。猫ナベ児院。


「――続いてのニュースです」


 リビングにてテレビのニュースが流れる。
 茂は、朝の味噌汁とすすりながらその話を聞き流すようにうなずく。

「このニュース近所じゃね」

 柾が、そう言うと一が静香にうなずく。

「隣町だね」

 一は、たくあんを1枚口に入れご飯も口の中に放り込む。

「なんか、さも当たり前のようにいるけど……
 貴方たちどうしてここにいるの?」

 みゆきが、そう尋ねると達雄がうなずく。

「みゆきにしては、哲学的な質問をするじゃないか。
 人がどうしてそこにいるのか……
 うむ、なかなかの難題だ」

「いや、そこまで深い質問じゃないけど……」

 みゆきが、一歩引く。

「茂が今日、日直だからな。
 その手伝いに来た」

 柾が答える。
 すると百寿が言葉を放つ。

「朝ごはん、食ってきてないのか?」

「食べた。
 だけど、朝ごはんは別腹だ!
 食パン1枚で腹が膨れるかっての」

 柾が、そう言って目指しを一匹口に運ぶ。

「男の子は、元気があっていいですね」

 南が、そう言って紅茶を口に運ぶ。

「って、百寿さんと南さんまでなんでいるの?
 仕事は?」

 みゆきが、驚いた声でいう。

「みゆきいつの間にかツッコミキャラになったんだな」

 百寿が、ニッコリと笑う。

「関西人だからね!
 って、そうじゃなくて……」

「俺らは仕事だ。
 この事件どうやら風舞が絡んでいるらしい」

「風舞……ってあの風舞か?
 この孤児院に一瞬だけ顔を出した……」

 達雄がそう言うと百寿が首を縦に振った。

「ああ……
 その風舞だ」

 その声は低く響いた。
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