水平線の彼方に( 上 )
ーーー愛していたのは、私だけだった…。

五年も付き合っていたのに、どうして今こんな形で別れが来たのか…。
今までの五年間は、厚にとってどんな日々だったのか………。


浮かんでくる思い出は、容赦なく心の中を切り裂く。

「ひどいよ…あんまりだ……」

漏らした本音が、余計に悲しくさせた。
時折吹く突風に飛ばされて、岩の下に落ちてしまいたいとさえ考えた…。

でもーー
やっぱり死ぬことはできなかった…。
こんな寂しい場所で、一人死ぬのも怖かった……。

泣きたい程泣いて、叫びたい程叫んで…
ようやく立ち上がった…。

身も…心も…
すっかり冷え込んでしまっていた……。


凍てついた足をゆっくりと動かし、歩き始める。
来た時と同じテトラポットの上を、風に吹き飛ばされそうになりながら進み、駅に辿り着いた……



小さな無人駅のホームでは

海鳴りが響き渡り

いつまでも

いつまでも

耳の奥で

こだまし続けていた………。
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