嘘恋

約束






「…って、あれ?」








あたし、ここで寝ちゃったんだよね?






「ちょ…今何時?」












「ん?八時くらいじゃね?」










「八時!?」








学校あるじゃん!



はやくしないと遅刻だよ!







「バカっ!なにゆっくりしてんの早く支度して」







あわてて起き上がりたどたどしく廊下を走って洗面所へと走り込んだ。








「やばいやばい遅刻だ」








そこらへんにあったヘアアイロンを勝手に使って髪を整える。









「なーにしてんの」









ゆたゆたとダルそうに歩いてくる成瀬くんが鏡にうつった。






「なーにしてんのじゃないよっ。学校遅刻しちゃうからはやく着替えて」









すると、近づいてきた成瀬くんの腕が
あたしのお腹あたりを軽く抱きしめた。








「ちょっと…成瀬くん?」









「今日、祝日」









「…へ?ほんと?」









「ほんと。だからそんな急ぐなよ」











なんだ、よかった…。


ほんとに学校だったら思いっきり遅刻だったもん。








「…う、うん」








寝起きの成瀬くんは、こんな感じなんだ。





なんだか甘えんぼうと言うか…子供みたいだけど




なんだか新鮮で、かわいい。







「つっても親に何も言ってないから一回帰ったほうがいいよな」








「あ、友達って言えば帰らなくても大丈夫だよ?」









「…俺と離れたくないの?」








ほら出た、いつもの成瀬くん。





ん?と、楽しそうにあたしの顔を覗き込んできた。







「ちーがーうもん。なら帰ろーかな」








わざとらしく手をほどいて歩き始めるとやっぱり成瀬くんはあたしの指先をつかんだ。








「帰んな」






ホンキになんなくても冗談なのにね。








「…わかってるよーん!」









「行きたい場所あるから早く親に電話して来いよ」








「うんっわかった!」








おまわりさんポーズをすると、笑ってあたしの頭を叩き部屋に戻っていった。









それにしても…ここが成瀬くんの家なんだよね?







改めて思ったけど広いなぁ。



高級な感じが溢れてる。






お母さんには適当に電話をして、あたしも部屋に戻った。








「そういえばお母さんとかは?仕事?」










「そそ。お父さんは外国で医者やってて、んで母さんは父さんについて行ったから誰もいないよ」










「そうなんだぁ。海外ってすごいね!」










「まぁ、ちょっとは尊敬できるところないとな」









「じゃあ家のことは自分で全部やってるの?」









「そそ。あんま料理はできないけどな!金は余るほど送られてくるし、食べ物には困らないから助かってるんだよ」









それだからあのレストランの時もお金がある発言してたんだ。









謎が解決。








「…あ、そういえばあたし着替えたくても服ないや!」








今着てるのは制服だから、この格好じゃ遊びに行くのには少し動きずらい。








「あ、俺のでいい?」








「あ、うんっ」







彼氏の服を…あたしが着る。




夢に見ていたことが、また実現された。










どこへいくのかわからないけど



楽しみっ!







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