スセリの花冠
……早くも見つかってしまった。

王の間で待っている筈じゃなかったのか?

「待っていたぞ、ディアラン」

……待ちわびてたのか?

ディアランは観念し、苦笑するとゆっくりと振り返った。

一方愛世は突然響いた大声にピタリと足を止め、ディアランを見上げた。

それから小声でディアランに尋ねる。

「……誰?」

「王だ。ティオリーン帝国の王、アルファス」

ディアランもまた小声でそう返すと、さりげなく自分の身体で愛世を隠した。

ティオリーン帝国の王アルファス……。

愛世が見つめる中、アルファスは足を投げ出すようにして石造りの廊下を進み、瞬く間にディアランの真正面までやって来た。

間近で見るアルファスは辺りをはらうような雰囲気を持ち、実にきらびやかな男である。

愛世は無意識に両目を細めた。

……なんて眩しい人なのかしら。クラクラしそうだわ。

それに王というよりは王子のように若く、髪も瞳も黄金色で、意思の強そうな眉と口元が印象的である。

その時、

「これはこれは我がティオリーン帝国の若き王、アルファス様」

ディアランが胸に手を当てうやうやしくそう言うと、アルファスはたちまちムッとしたように黄金色の瞳を光らせた。

「なんだ、そのわざとらしい喋り方は。近衛兵を山賊狩りに向かわせたことをまだ怒ってるのか?」
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