スセリの花冠
「もうすんだ事だろ。そう怒るな」

その途端、姿勢の崩れたディアランの真後ろに、ひとりの女が立ち尽くしていた。

誰だ、この女は。

アルファスが口を開こうとした瞬間、ディアランがそれよりも早く、

「アルドの森で拾ったんだ。この娘は俺がもらう」

なんだと?

驚いたアルファスはまじまじと女を見下ろした。

…今までのディアランの趣味とは全く違う女である。

……まるで子供じゃないか。

一方舐めるような視線を受けた愛世は、緊張のあまりゴクリと喉が鳴りそうになるのを必死でこらえた。

ティオリーン帝国の王、アルファス…。

ディアランに負けず劣らずの長身である。

しかも強い光を放つ黄金色の瞳は眩しく、愛世は眼を合わせていられなくなり思わず俯いた。

そんな愛世に早速アルファスが声をかける。

「女、名は?」

「……アイセと申します」

「アイセ?珍しい名だな。生まれはどこだ」

う、まれ……。

それはその……どうしよう…。

愛世が口ごもっていると、ディアランはアルファスの腕を解き、代わりに優しく彼女の肩を抱き寄せた。

「そう矢継ぎ早に質問するな。困ってるじゃないか。アイセは怪しい者じゃない」

ディアランに肩を引き寄せられた女は、頬を染めつつも全身を強張らせてびくついている。
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