スセリの花冠
そう遠くない未来、アルファスは剣の腕も戦いの策においても、俺を追い抜いていくだろう。

世界を統一するのはこういう男だと、ディアランは感じていた。

「さあ、明日も公務に励まなければなりませんぞ。ティオリーン帝国の王よ」

またもや嫌味たっぷりのディアランの口調に、アルファスは無言で踵を返した。

その背にディアランが声をかける。

「アルフ、心配いらない」

その優しさを含んだ声を聞きながら、アルファスは奥歯を噛み締めた。

俺は王だぞ!完全に子供扱いじゃないか。

……しかし。

ピタリと足を止めて振り返ると、アルファスはディアランに肩を抱かれて歩く愛世を静かに見つめた。

…あの女……絶対に本性を暴いてやる!


****


次の日から愛世は、いい顔をしないディアランをやり過ごして仕事を探し始めた。

だがなかなか見つからないのが現状だった。

それはそうである。

たとえば各部屋にはそれぞれの掃除係、食事係、服係、風呂係、庭師といったようにあらゆる仕事にそれ専門の人間がいて、愛世が入り込む余地などないのだ。

逆にそれらを奪ってしまうと彼らは賃金がもらえなくなってしまう。

「どうすればいいのかしら……」

愛世は途方にくれた。

考えながらトボトボと歩いていると大きな建物が現れ、その周辺には見覚えのある鎧にマント姿の男達が行き交っている。
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