スセリの花冠
「……なんですか?」

アルファスはこれ以上愛世を怯えさせたくなくて、ゆっくりとした足取りで彼女に近付いた。

けれど愛世にしてみれば冷たげに光るアルファスの瞳に、どうすればいいかわからない。

凛々しい顔立ちと大きな身体に戸惑い、愛世は後ろへ一歩下がった。

アルファスはそんな愛世に、無言で左手の物を差し出す。

「……なんですか?」

「……お前に」

反射的に手に取るとそれは綺麗な女性用の服で、愛世は咄嗟に首を横に振った。

「要らないです。こんなのいただけません」

すぐにアルファスの手に返そうとするも、彼は身体を反らして愛世を避けた。

こんなの、もらえない。

ただでさえ嫌われてて、それなのにここでお世話になってるし、とにかくもらえない。

一方アルファスは、愛世のその態度に腹が立った。

俺がやると言ってるのに、要らないだと。

「受けとれ」

愛世は真っ直ぐアルファスを見て言った。

「どうして……ですか?」

……どうして?

アルファスは、言葉に詰まった。

…なんと言えばいいんだ。

この服は、いわばアルファスの謝罪の気持ちだった。

あの日愛世の自由を奪い、服を引き裂いた事への謝罪。
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