スセリの花冠
無理矢理キスをし、気持ちを傷つけた事による謝罪。

だがアルファスは、女に対してそれを言える男ではない。

こういう事は最も苦手で、身体中が何とも言えない程熱くなって耐えられなくなる。

「なんでもいいから受け取れ」

ぶっきらぼうにそう言うと、アルファスは愛世に服を握らせた。

愛世は嫌だった。

アルファスが何を考えているか検討もつかなかったがきっと本人は、好きで愛世に服を与えようとしているのではないと思った。

そんな相手からもらった服なんて、着れるわけがない。

嫌悪に満ちた眼差し、言葉、自由を奪いながら自分を傷つけたアルファス。

よくよく考えると……アルファス王は初対面から印象が悪かったわ。

私をスパイだと決めつけて……確かに私も言い過ぎたけど、先に酷いことをしたのはアルファス王で……。

でも……王族だから……わがままで意地悪に育ってしまうのは仕方がないのかしら。

ああ、もう。

あれこれ考えている内に愛世は疲れてしまい、これ以上アルファスと関わっていたくなかった。

「……ありがとう……ございます……アルファス王」

愛世は服を受けとると、深々と頭を下げた。

「……」

アルファスは顔を上げた愛世を一瞬見ると、身を翻して出ていった。

早くやり過ごしたいとでも言わんばかりの表情。

アルファスはこれ以上、こんな儀礼的な愛世を見たくなかった。
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