スセリの花冠
ところがである。

今一度城内に潜り込む機会はないかと考えていたとき、エリーシャは街でアルファスの王位継承記念式典が開かれると聞き付けた。

なんでも、催しで躍りを披露できる者を募集しているというではないか。

……これだ。

エリーシャは躍りが得意であった。

早速街の中心部にある仲介業者の元へ急ぎ、躍りを披露するとエリーシャは懇願した。

「城で躍りを披露すると三日分の謝礼が受け取れるとか。是非とも病気の母のために稼ぎたいのです」

「あんた程躍りが上手けりゃ俺の株も上がるってもんだ。明日、城から使いの役人が来るから紹介してやるよ」

「ありがとうございます。これで母に良く効く薬を買ってやれます」

エリーシャは、形のよい唇を引き上げて笑った。

ようやく来ようとしているのだ。

ディアランとアルファスの息の根を止める日が。

エリーシャは人混みの中を歩きながら高鳴る心臓にソッと手を添えた。

もうすぐ恨みを晴らせると思うと、身体が震えるようであった。
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