スセリの花冠
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愛世の眠る部屋の前で、ディアランはひたすら祈った。
そして万全の警備体制をとっていたのにも関わらず暗殺者に侵入され、王の命を危険にさらした事を悔やんだ。
俺は……愛世に重傷を負わせてしまった。
ディアランは唇を噛みしめた。
アルファスの王位継承記念日を台無しにしたのは俺だ。
愛世を死なせてしまうかもしれない自分を、ディアランは恨んだ。
こんな失態を晒した自分自身に傷ひとつなく、罪もない愛世は生死の境をさ迷っているのだ。
自分の罪深さに耐えられない。
ディアランは後悔を胸に、ただ祈るしかなかった。
「ディアラン」
弾かれたように顔を起こすと、愛世のいる部屋からアルファスが出てきた。
ディアランには謝る他、言葉がない。
「すまない、アルフ」
アルファスは静かに言った。
「お前のせいじゃない」
それから苦しそうに眉を寄せる。
「こんな事になったのは俺のせいだ。俺は…あの女を知ってた。あの女はもうずっと前から俺を殺そうとして、王宮に入り込んでいたんだ。きっとあの短剣もその時に持ち込んで城内に隠していたんだろう。ディアラン、お前は悪くないんだ」
ディアランはなにも言えなくて、ただアルファスを見つめた。
「愛世に会ってやれ」
ディアランの肩をトンと叩いてアルファスが去っていくと、彼は意を決して入り口に近づいた。
幕を上げて中を見ると、死んだように横たわる愛世がいる。
ディアランはそっと近づくと、ゆっくりと膝をついて愛世の顔を覗き込んだ。
形の良い唇は土色で、ディアランは胸が締め付けられるように苦しかった。
突然の出逢いから今までの事を思い出して思わず彼女の名を呼ぶ。
「アイセ…」
愛世のか細い手をそっと握り、ディアランはその甲に口づけた。
「死なないでくれ、アイセ」
僅かに射し込んだ紅色の満月の光は、ディアランと愛世の手を頼りなく照らしていた。
愛世の眠る部屋の前で、ディアランはひたすら祈った。
そして万全の警備体制をとっていたのにも関わらず暗殺者に侵入され、王の命を危険にさらした事を悔やんだ。
俺は……愛世に重傷を負わせてしまった。
ディアランは唇を噛みしめた。
アルファスの王位継承記念日を台無しにしたのは俺だ。
愛世を死なせてしまうかもしれない自分を、ディアランは恨んだ。
こんな失態を晒した自分自身に傷ひとつなく、罪もない愛世は生死の境をさ迷っているのだ。
自分の罪深さに耐えられない。
ディアランは後悔を胸に、ただ祈るしかなかった。
「ディアラン」
弾かれたように顔を起こすと、愛世のいる部屋からアルファスが出てきた。
ディアランには謝る他、言葉がない。
「すまない、アルフ」
アルファスは静かに言った。
「お前のせいじゃない」
それから苦しそうに眉を寄せる。
「こんな事になったのは俺のせいだ。俺は…あの女を知ってた。あの女はもうずっと前から俺を殺そうとして、王宮に入り込んでいたんだ。きっとあの短剣もその時に持ち込んで城内に隠していたんだろう。ディアラン、お前は悪くないんだ」
ディアランはなにも言えなくて、ただアルファスを見つめた。
「愛世に会ってやれ」
ディアランの肩をトンと叩いてアルファスが去っていくと、彼は意を決して入り口に近づいた。
幕を上げて中を見ると、死んだように横たわる愛世がいる。
ディアランはそっと近づくと、ゆっくりと膝をついて愛世の顔を覗き込んだ。
形の良い唇は土色で、ディアランは胸が締め付けられるように苦しかった。
突然の出逢いから今までの事を思い出して思わず彼女の名を呼ぶ。
「アイセ…」
愛世のか細い手をそっと握り、ディアランはその甲に口づけた。
「死なないでくれ、アイセ」
僅かに射し込んだ紅色の満月の光は、ディアランと愛世の手を頼りなく照らしていた。