彼氏と思っていいですか?
3.テレビのなかの人、みたいな
翌朝、私はもう少しで遅刻するところだった。

「ぎりぎりの時間に来るの、珍しいね」

「うん、ちょっとね」

体調でも悪かったのかと気遣う香織ちゃんに、申し訳ない気持ちが沸いてくる。

私はまだ、朝陽くんのことをなにひとつ打ち明けていなかった。
最近仲良くなったことはもちろん、彼を遠くから見つめていたことも。


隠し続ける気はなかったけれど、なにせ展開が早すぎた。
きっかけがあって、会話が増えて、話が合うことに気がついてーーそんなふうに段階を踏んで徐々に話すようになっていったのなら、その過程で『最近朝陽くんと親しそうだね』と聞かれることもあっただろう。

だけど、朝陽くんはいきなりだった。家を調べて夜に私を訪ねてきたし、約束もしていないのに二学期初日の朝に迎えに来た。
私が好意を持っていたからよかったものの、そうでなかったらただのストーカー野郎だ。
その件も含めて説明しないと、話を聞かされた側は眉をひそめるに決まっている。


朝陽くんは教室のうしろのほうで友達と盛り上がっていた。
私が登校したことにも気づいていない様子。
知らん顔の演技をしているようにはみえない。

私一人がもりあがってたってこと?
今日は、私を迎えに来る日じゃなかったってこと?
朝陽くんのぶんのお弁当を用意して家で待っていた自分が、ばかみたい。

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