コドモ以上、オトナ未満。


「――え、ココちゃん、来週誕生日なの?」


同じ部分の色塗りをしていたカナコが、オレンジの絵の具のついた筆を動かしながら、そう言った。


「うん。家族二人しかいないのにさ、お父さんってば、大きくて丸いケーキ買うって張り切ってる」


あれから一週間入院したお父さんだけど、今ではすっかり元気になって、あたしとの約束通り、なるべく早く帰ってきてくれるようになった。

テーブルの上にいつも置かれていたお金のことも、あたしからちゃんと“いらない”ってお父さんに伝えて、その代わりに、あたしが夕飯を作ることした。

まだ簡単なものしかできないし、たまにひどい味の時もあるけど、お父さんは嬉しそう。


最近はそういうあったかい雰囲気に慣れてきたから、ずっと“苦手”だった誕生日も、今年は楽しく過ごせればいいと思ってるんだけど――――



「ココちゃんの誕生日、真咲くんはちゃんと知ってるの?」



カナコがふいに放った疑問に、あたしは我に返った。


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