コドモ以上、オトナ未満。
悔いのない……。
できればそうしたいけど、そんなの、今日一日じゃ取り返せないんだよ、先生。
うつむいてため息をついていると、廊下の向こうからココが一人で歩いてきた。
あれ……賢人とは入れ違いになったのか?
「岩崎さんも戻って来たようですし、どうでしょう。今から二人で色々回ってきたら」
「いや、先生、俺たち――」
「岩崎さん!」
恩田先生って、たまに人の話を聞かないよな……先生のくせに。
そう心の中で突っ込んでいると、ココの手を引いて無理矢理俺の元まで連れて来た先生。
「さて! 店番は任されました。あとは若いお二人でどうぞ」
トン、と背中を押されて、強引に二人で並ばされると、ココが怪訝そうに俺の顔を見上げる。
「……これ、どういうこと?」
「なんつーか……先生の、おせっかい癖が出たって感じ?」
「ああ、なるほどね……」
その言葉で事情を飲みこんだらしいココは、こくこく頷きながら苦笑する。
「どーする? せっかく自由にしてもらったから、別行動でどっか――」
言いかけた言葉が止まってしまったのは、予想外のことが起きたから。
ココが俺の左手に触れ、ぎゅっと握ってきたのだ。
久しぶりに触れた彼女の温もりに、無防備だった俺の胸がトクンと音を立てた。
「……ココ?」
「一緒に……歩いたら、ダメ、かな」