コドモ以上、オトナ未満。


ばっさり否定すると、わざとらしく悲しそうな顔をする大森。

それがあまりに変な顔なのでぷっと吹き出すと、大森はテーブルの上のペットボトルをあたしに差し出して言った。


「緊張、解けた?」

「……うん。あ、もしかしてそのために変顔したの?」

「いや? べーつにぃ」


全く、とぼけかたまでわざとらしいんだから……


大森はこんな風に、昔からずっと変わらない調子であたしの側にいてくれている。

ときどき嘘か本当かわからない告白をしてきたりもするけど、写真集が発売された頃からあまり言ってこなくなった。

たぶん、あたしが真咲に未練たらたらだって、それを読んで知ったからだ。

さっき彼が“乙女”と評したあの写真も、頭の中を真咲でいっぱいにしたらできた表情(かお)。

真咲と離れてからもう八年……毎日の生活は忙しくて充実しているけど、あたしの恋は、まだあの頃から止まったままだ。


記憶の中の真咲は17歳だけど、思い出すだけでドキドキする。

あの頃どうしてもっといっぱいデートしておかなかったんだろう、とか。

意地張ってすれ違っちゃったあの年の誕生日、やり直したいな、とか。

最後の日に非常階段なんて微妙な場所から見送るとかなんなの?とか。

もう考えることは後悔ばっかり。

……これって大人になった証拠?


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