コドモ以上、オトナ未満。


「……お前に信用されても気持ち悪りーんだよ。もうウザい、目障り、消えろ」

「だってさ、ココ。じゃあ消えよっか」

「うん……ありがとね、大森。あたしたち、スタッフさんたちに挨拶したら帰るから」


あたしが笑顔を向けると、大森は急にくるりと後ろを向き、片手を上げると“ばいばい”の動作をした。

……もう、いい加減呆れちゃったかな。

ずっとあたしを支えてくれた大森じゃなく、八年も離れてた相手を選ぶあたしのこと。







「――違うと思うよ? たぶん、賢人のやつショックだったんだ」


真咲のアパートへ向かう道の途中、あたしがそのことを真咲に聞いてみると、彼はそう言って苦笑した。


「だって、アイツはアイツなりにココのこと本気だったもん」

「……そうかな」

「うん。……でも、それ知ってても、譲ってやることなんてできないからさ、ココのことだけは、絶対」


右隣にいる真咲がそう言って微笑み、あたしの手を握る手にぎゅっと力を込めた。

……あたしはその瞬間から、急激に照れてしまう自分を感じてうつむいた。


さっきまでは、第三者がいたから平気だったけど。

真咲、高校生の時よりずっとカッコよくなってるし。

なんかオトナの男の人になってるし。

だけど笑顔にはあの頃の面影ももちろんあって、胸がぎゅうっとなる。



「……心矢」



あたしは、口の中だけで練習するみたいに、小さな声でそう呼んでみた。

特に意味があるわけじゃないし、聞こえてなくてもいいと思った。

ただ、なんだか想いが溢れて、名前を呼びたくなってしまったのだ。


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