コドモ以上、オトナ未満。


お父さんへの返信を終え、スマホをしまって心矢の隣に戻ると、大きな体の彼なのに、子どもみたいにあたしの胸に顔を埋めた。


「……俺、ココの言ってたことと、逆だな」

「逆?」

「今、すげー子供に戻った気分。ずっとこうして、ココとじゃれてたい」


……ずっと、こうしてたい。それは、あたしも同じ。


「きっと、曖昧なんだよね……大人と子供の境界って」

「だな」


ハタチで区切るっていうのは、ただ社会がそう決めただけであって。

本当は人によって違うし、大人でも子供になっちゃうときがある。


でも、それをうまく使い分けられないもどかしい時期があって、あたしたちにとってはそれが、高二のあのときだったんだと思う。

意味もなくぶつかって、まわり道して……

それでも答えが分からなくて、いつも迷子で。


「昔のあたしたちは、子ども過ぎたのかな」

「……いや。微妙に大人に片足突っ込んでるから、余計ややこしかったんだろ」


大人のやり方で愛を確かめ合える今があるのも。

子どもみたいに素直に甘えられるのも。

あのもどかしい時期を二人で通り過ぎて来たから、きっとできること。


そしてあたしたち、これからも、ずっと。



「あたし……これからは心矢と一緒に、素敵なオトナになりたい」

「ココ……うん、俺も」



つないだ指先のあたたかさを信じて、歩いて行こう。


どんなに道が長くても、きっと。

もう、迷子にはならないから。








コドモ以上、オトナ未満。


END


< 205 / 211 >

この作品をシェア

pagetop