コドモ以上、オトナ未満。
お父さんへの返信を終え、スマホをしまって心矢の隣に戻ると、大きな体の彼なのに、子どもみたいにあたしの胸に顔を埋めた。
「……俺、ココの言ってたことと、逆だな」
「逆?」
「今、すげー子供に戻った気分。ずっとこうして、ココとじゃれてたい」
……ずっと、こうしてたい。それは、あたしも同じ。
「きっと、曖昧なんだよね……大人と子供の境界って」
「だな」
ハタチで区切るっていうのは、ただ社会がそう決めただけであって。
本当は人によって違うし、大人でも子供になっちゃうときがある。
でも、それをうまく使い分けられないもどかしい時期があって、あたしたちにとってはそれが、高二のあのときだったんだと思う。
意味もなくぶつかって、まわり道して……
それでも答えが分からなくて、いつも迷子で。
「昔のあたしたちは、子ども過ぎたのかな」
「……いや。微妙に大人に片足突っ込んでるから、余計ややこしかったんだろ」
大人のやり方で愛を確かめ合える今があるのも。
子どもみたいに素直に甘えられるのも。
あのもどかしい時期を二人で通り過ぎて来たから、きっとできること。
そしてあたしたち、これからも、ずっと。
「あたし……これからは心矢と一緒に、素敵なオトナになりたい」
「ココ……うん、俺も」
つないだ指先のあたたかさを信じて、歩いて行こう。
どんなに道が長くても、きっと。
もう、迷子にはならないから。
コドモ以上、オトナ未満。
END