コドモ以上、オトナ未満。


「レモンといちごください」

「はいよー」


海の家でちゃきちゃきと接客するおばさんにかき氷を二つ注文し、目の前でがりがりと氷が削られるのを眺める。

ピンクと黄色の甘いシロップがかかったあたしたちのかき氷はすぐに出来上がり、あたしはそれをこぼさないようにしながら、砂浜をゆっくり歩いていた。

――そのとき。


「……Honeyの、ココ?」


すれ違った女性が、ぼそっとそう呟いたのが聞こえて、あたしは冷や汗をかいた。

こんなこともあろうかとつばの広い帽子を深めに被ってきたのに、もしかして、気づかれた……?


「やっぱり……ココ、ココちゃんですよね!」


キャッとはしゃぐように言った女性は、あたしの両手がかき氷でふさがっているにも関わらず、「すごーい、かわいい、足細いー!」などと興奮しながら、あたしの行く手を阻む。


「あ、あの……今日は、プライベートなので」


苦笑しながら脇をすりぬけようとしたのに、彼女はさらに声を大きくして余計なことを言う。


「えっ! もしかしてココちゃんって彼氏いるんですか? 超見たい~!」


……ダメ。心矢は、あたしのだもん……

モデルを辞めてからもずっとスタイルよくて、今日の水着姿も、めちゃくちゃカッコいいし……
そういうの、他の女の人に、あんまり見られたくない……

コドモじみた嫉妬だとわかっているけれど、次第にトゲトゲしてくるあたしの心。

いっそ怒っちゃって、このかき氷ぶちまけたらスッキリするかなぁ……なんて。

余計目立っちゃうだけだよね……マネージャーと、大森にきっと怒られる。


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