コドモ以上、オトナ未満。
海で遊んでいたはずなのに、あたしの様子がおかしいって気づいてくれたのかな……
まるでヒーローのようなタイミングで現れ、あたしの体を受け止めてくれたた彼にときめきを隠せずにいると、心矢は苛ついたような声で、周囲に群がる人々に言う。
「本当のファンなら、彼女困らせるようなことすんなよな。……もし怪我してたらどうすんだよ。ココの仕事は体が資本なんだってことくらい、素人でもわかるだろ?」
……心矢。
ただ単に、ピンチを助けてくれただけじゃなくて、仕事のことまで心配してくれていたんだ。
心矢は急に静まりかえる観衆をぐるっと一周睨みつけると、「あと、ついでに言っとくけど」と前置きをしてから、ふいにあたしの頬に大きな手を当てて、言い放つ。
「――ココのHoneyは、俺だから」
――――え。
そしてざわざわ、と周囲がどよめいている間に、心矢は少し顔を傾けて、あたしの唇にちゅ、と自分の唇を重ねる。
……こ! これは、さすがに……まずく、ない?
そう思いながらも、唇に触れる柔らかい熱に、胸はうるさいぐらいにドキドキ鳴っている。
放心状態でぱちぱちと目をしばたかせるあたしに対して、ゆっくり唇を離した心矢は満足そうに微笑んで、あたしの手を握る。
「つーわけで。かき氷、もう一回買いにいこっか」
「え? う、うん……そうだね」
ぽうっと熱に浮かされてしまったあたしは、心矢に手を引かれるまま観衆の輪を抜け出す。
すると、なぜだかぱちぱちと拍手が沸き起こり、心矢はあたしの耳元で、「ちょっとやりすぎたかな?」なんて今さらのように呟いていた。