コドモ以上、オトナ未満。
子どもの目から見ても、もうとっくにダメになっていた俺の両親。
なのに、母は父の機嫌を損ねないよういつも必死だった。
そんな母に気づいていながら、父も父で少しも優しくしようとしない。
当時は、それの繰り返しでとうとう限界のきた母が、「心矢を連れて出て行く」とヒステリックにわめきはじめた頃だった。
だから、小さないさかいの種も家庭に持ち込みたくなくて、俺は子猫をかわいそうだと思いながらも、元の場所へとそっと戻した。
「……ゴメンな」とひとことだけ言って。
その子がどうなったのかを見るのが怖くて、それから数週間は、通学に別の道を使った。
そうして春休みを過ぎたころ、ようやく猫のことは過去として受け入れるようになった。
家の中は冷戦状態へと変わっていた。
……もうさっさと別れりゃいいのに。
子どもながら白状にそんなことを思いつつ迎えた、高校二年の新学期。
俺は、教室の中に、あの雨の日に出逢った女の子を見つけたんだ。
死にかけていた子猫に、「あたしもアンタみたいになるのかな」と話しかけていた、不思議な女の子。
――岩崎湖々を。