コドモ以上、オトナ未満。
「あ、うん。知ってる。付き合い始めた日、真咲も一緒にいたから」
「……そっ、か」
なんで、カナコがそこでしゅんとするんだろう?
あたしは不思議に思って、ノートに走らせていたシャーペンを置く。
「……カナコ?」
「ココちゃん……私が、真咲くんにフラれたのは知ってるよね?」
「……うん。あのあと、真咲に聞いたよ。好きな人がいるから、断ったって」
結局、その“好きな人”が誰なのかは教えてくれなかったけど。
「……それ聞いて、ココちゃん、どう思った?」
「え? ……カナコ、落ち込んでないといいなって」
「それだけ?」
「う、ん……」
歯切れの悪いあたしの返事を聞くと、カナコがはぁぁ、と深いため息をつく。
……さっきからなんなんだろ?
カナコのその反応。
気になって宿題が全然進まないじゃん。
「私は、さ……フラれはしたけど、やっぱり真咲くんは特別な人なんだよね」
カナコの方も勉強に集中できなくなったのか、広げていた問題集をパタンと閉じて、静かにそう言った。
「……うん」
「でも、別に付き合いたいとかじゃなくて。真咲くんは真咲くんの好きな人と、幸せになって欲しいなって思ってるの」
……なんか、カナコらしいな。
あたしなら、絶対にそんなこと思えない気がする。
あたしに恋愛経験はないけど、片思いの相手の恋を応援するって、想像しただけでツラそうだもん。