コドモ以上、オトナ未満。


「……そういえば。カナコは知ってるんだよね。真咲の好きな相手のこと」


あのとき真咲が言ってたもん。
『カナコちゃんはすぐわかったみたい』って。


「うん……知ってる」

「誰?」


あたしはそう言って、机に身を乗り出した。

色々予想してもやっぱりピンとくる人物がいないから、いまだに気になってたんだ。

別に知ったからって、何をするってわけでもないんだけど……


「教えてもいいけど……ココちゃんに、ひとつお願いがあるの」

「お願い?」


カナコは深く頷いて、控えめにこう言った。



「今度の週末さ……海の方でやる花火大会、私と一緒に行ってほしいな」

「花火大会?」

「うん。来てくれたら、そのときに真咲くんの好きな人教える」


花火大会、か……

そういえば、ずいぶん長いこと行ってなかったな。

最後に行ったのは、あたしが小学校一年生のとき……

あの時はまだ、お父さんとお母さん、うまくいってて。

お母さんにキレイな浴衣を着せてもらったその日だけは、欲しいって言ったものを全部買ってもらえるのが嬉しくてしょうがなかった。

わたあめも、リンゴ飴も、水に浮かんだたくさんのボールをすくう遊びも。

かたっぱしからねだって、疲れたらお父さんの背中におんぶしてもらって。

肝心の花火の頃に寝ちゃったあたしは、帰ってきてから泣きわめいて、両親のこと困らせたっけ……


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