アイドルなんて、なりたくない<font color=
第三章『迷える小羊』
次の日の朝

優衣は、弓道に使う弓に弦を張っていた。

昨日は、よく眠れていなかった気がする…

優衣の頭の中は混乱していた。

わからない…

自分がどうしたいのか

目立つ事が好きじゃないから、やりたくないと思っている。

でも、怜や母達が後ろ指差されるのは嫌だ。

だけど、無理にやっても怜は、怒るだろう。

認めたくないのだが、自分でもやってみたいなと、どこかで思っている。

弓と矢を持ち、的の前に立つ。

しかし、スッと後ろに下がり、道具を脇に置いてから正座をする。

ゆっくり深呼吸をしてから、心を落ち着かせる。

少しの間の後に、再び立ち上がり的の前に立つ。

的をジッと見つめ、弓を構える。

矢をたがえ、ゆっくり弓を引いた。

【パシュッ!】

矢は真っすぐ的に向かう。

【ザッ!】

しかし、矢は的を外れ無残にも土に突き刺さった。

「ダメか」

優衣は、弓を降ろして的に向かい一礼する。

後ろに下がり、正座をしてから、目を閉じる。

「優衣、心が乱れているようですね」

静の声に、ハッとしてから、目を開ける。

いつの間にか静が、目の前に立っていた。

「お祖母ちゃん」
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