Sweet Honey Baby
 「アンクレットですねぇ。すごい綺麗」




 目を輝かせて見ているのはやっぱり、メイドさんもあたしたちと同じ年頃の女の子だからだね。


 のりちゃんは確か高卒で勤め出してから、6年目だと言っていたから今年で24才。


 童顔で可愛いからてっきり年下だと思っていたら、なんと4才も年上だったんだよね。


 で、もう一人のあたし付きのメイドのシマちゃんは、たしか短大卒の21才。


 あたしより1才だけ年上だけど、彼女とだけはまだ上手く意思疎通ができていなかった。


 …て、いうか嫌われてるよね、完全に。


 さすがに財前家の使用人教育は行き届いていて、挨拶もキッチリしてるし公私混同はしてこない。


 それでも、だいぶ慣れ親しんできた他の子たちとは全然違っていて、必要最低限、雑談にも応じてくれないのにはけっこう気持ち的に辛かった。


 まあ、彼女たちも仕事なんだもん。


 好き嫌いだってある。


 それを無理にフレンドリーに接しろって望むのは、迷惑以外なんでもないよね。


 ただ、毎日顔を合わせる人だから、せめてわだかまりだけは持ちたくなかった。


 どうしてあたしのことが嫌いなのか、教えてくれさえしてくれればな。


 悪いところは直すし、どうしても折り合えないなら仕方がないと諦める。


 でもいまのところあたしには思い当たるようなことがなかったし、そもそも初めて会った時からそんな感じなんだよね。


 …のりちゃんや他のメイドさんたち、一也とかにはそんな感じじゃないのにな。


 どうしてあたしだとダメなのか、何がいけないのか、考えても全然思いつかなかった。


 はあ…。




 「…ですよ」

 「え?」




 自分の中の物思いに夢中になっていて、のりちゃんの話を聞いてなかった。




 「あ、いえ、大したことじゃないんですよ」

 「うん、なになに?」

 「いえね、アンクレットって最近流行ってるじゃないですか?」

 「そうなんだ?」




 少なくてもあたしの身近ではしてる人がいないから、そういう気はしていなかった。


 夏場はともかく、冬場じゃせっかくのアイテムも見えないし、オシャレのしがいもないんじゃないかな。


 あたしはピアスとかブレスレットみたいな装飾品をやたらとするタイプじゃないから、このアンクレットも一也にもらったけど扱いに困っていた。


 足につけるんだとすぐなくしそうだ。


 腕時計も可愛いからと鎖にして、何度か知らないうちに留め金が外れてなくして以来、皮が定番だった。


 しかも、最近だと携帯があるから、腕時計すらしない時も多いしねぇ。




 「足は地面に一番近いところだから、アンクレットって、昔から魔よけとして身に着けられていた物らしいですよ」

 「へえ?のりちゃんってそういうの詳しいの?」

 「へへ。実は占いとか、ジンクスとかすごい好きなんです」




 女の子はそういうのが好きな子が多いから、特に珍しくはなかった。




 「もともとは奴隷の足首にする輪が始まりで、今だと、恋人や夫のもの、という意味があるそうです」
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