Sweet Honey Baby
 「ちょ!何言ってんのよ、勝手なこと…」

 『勝手なのはお前の方だろうがッ』




 怒鳴りつけられて、携帯を耳から離すけど、相変らず一方的であたしにしゃべらせようとしない。




 『どこの世間に、娘を身売りに出す親がいると思ってんだッ』

 「……」

 『俺がこんなことにならなかったら、借金は順調に返えせていたはずだし、いざという時にも、この店や家、土地も手放せば借金は残らねぇ。家族に迷惑をかけるつもりはなかった』




 わかってるよ。


 お義父さんが、堅実な人だっていうことは。


 病気で倒れたのは不測の事態だったし、いざという時もちゃんと考えていて、最悪身一つでもやり直せるくらいの余裕は残していてくれたってことも。


 けど、永嶋の家は、お義父さんのお父さんから受け継いだもので、先祖代々の土地だった。


 店だって、若い頃から一生懸命修業して、お義母さんと一緒に休む暇もなく頑張ってきたことは小さな頃からあたしも見聞きしていた。


 それなのに…あんなに頑張って盛り立てていた店をそんなに簡単に手放してしまうことなんてあたしにはとてもできなかった。


 かといって、世間知らずの女子大生にすぎないあたし一人の力ではどうにもできなくて、寝たきりになってしまうかもしれないというお義父さんの傍で右往左往するしかなかった。


 そんな時に、門倉の家からの援助を申し入れられた。


 店は…家族経営だったから、店主であり板前でもあったお義父さんが復帰しないとどうにもならない。


 だけど、とりあえずは休業ということで、借金の方をなんとかしてもらえればどうにでもなるんじゃないかって、それが浅はかだったことは、あの時のあたしでさえ気が付いていた。


 それでも、できることはしたかった。


 もちろん、結婚のことだって聞いていたけど。


 どのみち、誰かと恋愛したいとか、結婚とか、そういうことにはもう関心もなかった…むしろ忌避していたあたしには渡りに船くらいな気持ちだったって正直に言ったら、お義母さんに泣かれてしまったかもしれない。


 それくらいには、可愛がられていたし、愛されてもきたってわかってる。


 あたしたち親子の間も、そりゃいろいろあったけど、それでも『家族』と言って思い浮かぶのは、あたしにとって門倉の人たちじゃなくって、間違いなく『永嶋』の両親だった。


 だから、あたしのできる精一杯で、お義父さんやお義母さん、店を助けたかった。
 
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