白い雛鳥

ヴァンが若干引くくらい何度もお代わりをして漸くお腹がいっぱいになったリィナは食後のデザートを頬張りながら、先ほどから熱心に受け取った品物を見つめている厳つい男を見やる

「…それは一体何なんだ?見たところ何の変哲も無いネックレスだけど」

目立つところといえば中央に菱形の大きな黒曜石が付いてる位か

「ん?ああ…なんでも、このネックレスには魔力が込められているらしい。まぁ、俺には元々魔力がないから分からんが」

「…ふぅん」

黒色の宝石…ということは闇の魔力か

宝石の色によって込められる属性が変わる

火ならルビーやガーネット、木ならエメラルドや、ヒスイ。宝石の大きさや種類によっても込められる魔力の量も変わってくる

この大きさの宝石と種類ならかなりの量の魔力を蓄えることができるのだが…全く感じ取れないということは恐らく魔力をすべて使い切ったのだろう

そして、その魔力の種類も種族によって異なる

悪魔は闇、天使は光、エルフは木と水、獣は火、人間は光と闇以外の全てを使えるが、人間は元々魔力を持たないものが殆どである

恐らくあのネックレスは悪魔の統治するクロンから流れてきたものだと思われるが、あの騒ぎからして非合法だったのだろう

シャラリ…と自分の腕に着いたラピスラズリのブレスレットが小さく音を立てた


リィナは人間には珍しく魔法が使える
特に得意な属性は水だと育ててくれた男が言ってたから多分そうだと思う

様々な魔法が使えるのは人間だけだが、人間の魔力には際限がある

それを超えると魔力切れとなり、力を失うと共に、命を失う

それをあの男に口酸っぱく言われてきたものだから余程のことがない限り自分があらかじめ魔力を込めたこのブレスレットを使って敵との戦闘をこなしている

まぁ、大体は雑魚ばっかだから自分の愛用している短刀と薬品の入った瓶でなんとかなってるけど

「元々は俺の友人の持ち物なんだよ。盗まれたって言うからリィナに頼んだんだ」

基本的に取引先の細かい情報は聞かないようにしてるんだが…この男は勝手に喋ってくれるからそのまま聞いておく

「そうだ!追加の依頼でこのネックレスをクロンにいる友人に届けてくれないか?」

「…高くつくぞ」

魔法陣を使えば直ぐに行けるのだが、この国には魔法を使える奴が極端に少ない

使えるものは都心部に集められ、国の王に仕えている

まぁ、私はそんな窮屈な人生は死んでも嫌だから拒否し続けているけど

「分かってるって。帰ってきたらこの店で一番高い肉食わせてやる!」

「………絶対だぞ」

ヴァンは私の返事を肯定とみなしたのか、カウンターの下にある引き出しから長方形の煌びやかな装飾が施されたネックレスケースを取り出して、そこに入れるとニッと笑った

「じゃあ、頼んだ。あと、そこに行くまでの旅費と飯代も用意するから」

「…明日出発する。お店寄るからお弁当も作ってくれる?」

首を傾げて上目遣いで恐る恐る伺えば、ヴァンは真っ赤になって口をパクパクさせる

「…っ!!りょーかい!」

声を裏返しながらこくこくと何度も頷きじゃあ、今から仕込み始めるぞ!と意気込んで裏にある倉庫へ消えていった



「…この顔やっぱ便利だな」

自分の頬をサラリと撫でてクスッと笑うとカウンターに置いてあったケースを手に取り肩に掛けてあった白い布の袋の中に入れる

ピョンっと丸椅子から降りてフードを深く被ると家に帰るべく足を踏み出したのだった

< 11 / 58 >

この作品をシェア

pagetop