躊躇いと戸惑いの中で


「お土産持ってきたよ」

乾君に袋を渡すと、中を覗いて子供みたいに嬉しそうな顔をしている。

「ありがとうございます」

へぇ、こういう顔もするんだ。

今まで私が見てきたのは、いつも緊張したような表情が多くて。
あとは、真面目で真剣なところばかりだったから、年相応の笑顔も見せるんだってことに、ちょっと新鮮味を感じた。

そりゃそうよね。
大学卒業したばかりだものね。

「フラペチーノ、好きなの?」
「はい。飲んでいいですか?」

訊ねる表情は、目をキラキラさせていて、なんだか小さな子供みたい。
微笑ましくて、サービス精神が顔を出す。

「どうぞ、どうぞ。店舗に出る前に、飲んじゃって。アルバイト君たちの分もあるから、手が空いてる子から飲ませてあげてね」

笑顔つきで言ってみたり。

「ありがとうございます。みんな喜びます」

空いているパイプ椅子に腰掛けて、フラペチーノを美味しそうに飲んでいる乾君の横顔を眺めた。
若さなのか、あんなに飲んだ翌日だというのに澄んだ朝の空気のように爽やかだ。

羨ましい。


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