躊躇いと戸惑いの中で


少し不安になっていると、乾君が口を開いた。

「ひとつ、質問があるんですけど、いいですか?」

乾君は、飲み始めたフラペチーノを一旦机に置き、改まったように私に向き直った。
その表情は、真面目というか、淡々としていて、何を考えているのか少しも読み取れない。
フラペチーノに、子供みたいな顔を浮かべていた人とは思えない。

「質問? なに?」
「エリアマネージャーとは、ただの同僚だって言ってましたけれど」
「うん。そうだけど」

ん?
河野のことを訊きたいの?
エリア関連のことかしら?

話しの方向がよく解らなくて、私が僅かに首を捻ると、想像もしなかった言葉が飛び出した。

「じゃあ、碓氷さんは、今彼氏はいないんですか?」
「へっ?!」

余りに突拍子もない、それも個人的な質問に、思わずおかしな声を上げてしまった。

「なっ。何を急に」
「急ではありません。さっき、質問があると段階を踏んでいます」

「あ、いや。そうだけど。それって、仕事の話じゃないじゃない」
「そうですね。けど、仕事のことだとは、僕は一言も言ってません」

確かにね……。

あーいえば、こーいう。

だけど、返答は全て真面目顔だから、冗談で返す雰囲気にもならない。
なんか、扱いにくいな、この子。


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