冷徹執事様はCEO!?
「わかったわよ!大人しく一緒に帰るわよ!」

「少しは頭を冷やしましたか?」

田中は至極冷静に言う。

「… はい」

私は教師に叱られた小学生のように不貞腐れた顔でボソリと呟いた。

「では、乗ってよろしい」

田中が許可すると、タクシーの後部座席が自動で開く。また意地悪されないうちに、そそくさと乗り込んだ。

田中が自宅の住所を告げると、タクシーがゆっくり走りだす。

話す気にはなれなかったので、私は窓の外にボウっ視線を向けた。

「すっかり冷たくなってしまいましたね」

田中は私の手にそっと自分の手を重ねた。

まったく誰のせいだと思ってるんだ。

しかし、冷えた指先にじんわりと伝わってくる人肌の暖かさが心地よくて振り払う気になれなかった。
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