冷徹執事様はCEO!?
「誰が禿げるって?」

振り返ると、抜け目ない長男が立っていた。

ふと髪に目を向けると白いものが2、3本混じってるものの、まだ薄くなっていない。

よかった。

「あけましておめでとう。お兄様」私はニッコリ笑って誤魔化した。

「おめでとう。今日は随分お洒落してるじゃないか。なあ、遥?」

匠ちゃんが同意を求めても遥さんは表情を変えずにスルーする。

「禿げるわよ」私が耳元で囁くと遥さんはクスリと微笑む。

「そうね。私も着物着てくればよかったかな」

「来年は着物がいいんじゃないか」

匠ちゃんは、ようやく口を聞いてくれた事が嬉しかったようで、可愛い妹を押しのけて遥さんの横を陣取る。

「圭人と英茉は?」なんて早速話し掛けてる。

遙さんの前では、肩なしだ。


私もこんな風に家庭をもつ日がいつかくるのかしら… 。

結局、別れた後、田中からは一切連絡はなかった。

これは、もう終わったってことよね。

あの時は苦しかったけど、こうやって踏ん切りを付ける事ができてよかったかもしれない。

時折、胸の奥に深く刺さった棘が痛むこともあるが、それも徐々に和らいで行くことを私は知っている。

伊達に30年間生きてきた訳じゃないもの。
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