冷徹執事様はCEO!?
「恋人ではありません。ただの友人です」

この緊迫した空気でここまで堂々と嘘を着き切れるのってある意味すごい…。

「しかし、誤解といっても騒ぎになったことについては、私の落ち度には違いありません。燁子さんを巻き込む訳にはいかなかったので、ほとぼりが冷めるまでは、会うのを自粛していました」

「賢明だな」パパは納得したようにゆっくり頷く。

稜が連絡をくれなかったのはそんな理由があったのだと、改めて驚いてしまった。

てっきり、葛城家の魅力がなくなった私に興味もなくなったのかと思っていた。

胸の中のわだかまりがみるみるうちに溶けて行く。

「でも何も言わずに連れ出したら私達だって心配したわ」ママはまだご立腹のようだ。

「違うの、ママ。私が自分の意思で家を出て稜さんの所へ行ったのよ」

誤解の無いよう私は説明する。

「久しぶりに親子でお正月迎えられたのにどうして家出なんかするの」ママは悲しそうに眉根を寄せる。

「だって、男の人を沢山呼ばれて、嫌だったんだもの」私はチラリとパパに恨みがましい視線を向ける。

「皆新年の挨拶に来てくれたんだ。おもてなしすることは葛城家の者として当然の事だろう」

パパは微塵の動揺も見せずに最もらしい事を言ってくる。

さすが古狸だわ…

「田中さんがいたから?」

ママに尋ねられ、私は顔を真っ赤にする。

稜にチラリと視線を向けるとニッコリと微笑み掛けられる。

「まあ、そういう事かな」

私は俯き消えいるような声で答えた。

「うちの燁ちゃんはそう言ってるんだけど、田中さんはどうかしら?」

おっとりしていると見せかけてママはグイグイ攻め込む。
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