冷徹執事様はCEO!?
「たなかあ」

酔いどれた私は田中におぶさって、お荷物さながら部屋に運ばれた。

「燁子様、降りていただけますか?」

ベッドの前まで来ても私は田中から降りる意思がない事を示すよう首にギュッとしがみついた。

「く…苦しい…」

田中はジタバタと身悶えた。

「もうちょっと飲もうって言ってるー!」

「駄目です!離してください」

「い・やぁぁぁ!」

乱闘の末、田中はポイっと私をベッドに放り投げた。

「何するのよ!乱暴ね!」

「こっちは…死ぬとこだったので」

田中は喉元を押さえ肩で大きく息をしてる。いつもはピシリと分けられた髪も乱れていた。

「じゃあ、もう寝る」

「ありがとうございます」

何故か田中は深々と頭を下げた。

「着替えるから手伝って」

「…畏まりました」

「じゃあ、クローゼットから短パンとTシャツとってきて」

「はい、お待ちください」

田中は言われるがまま、いつものルームウェアを持ってきてくれた。

「脱がせて」

私はくるりと後ろを向き、背中の髪を肩に流した。
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