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6月23日




ここ最近、廊下に出ればシイナをよく見かけた。


そして彼女の隣には、必ずと言っていいほどあの赤髪の少年がいた。


二人で何を話しているのか知らないけれど、こんなにも頻繁に話せる友人がシイナにいた、ということが一番の驚きだった。


あのシイナが、ねぇ。


あたしが見る限りでは、シイナは友達を作ろうとしても失敗していた。


誰も友達にはなってくれなかったようだ。


あたしはそこで見て見ぬふりをしていた。


――つもりだった。


…一体、どこで歯車が狂ったのかな。


初めはそればかり考えていた。


でも。


今はそれすらも、どうでもいい。


シイナがあたしを消すか、あたしがシイナを消すか。


今は、それだけが重要なのだ。


あたしにもシイナにも、もう過去や記憶のことを振り返っている時間はない。


やるべきことは、目の前にある。


殺るべき人間は、目の前にいる。


あたしたちは、それだけを考えていればいいのだ。


6月23日。


だけどあたしは、“タイムリミット”の存在を、まだ知らなかった。


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