恋日和〜春〜




ーー「音……」
「なに?」
「無理して笑わなくてもいいと思う」
突然、何を言い出したのかと思ったら……朝のことかな。
「…… 多分、元気でいよう。元気でいたい。って思ってたの。そうしたら笑っていればいいんじゃないかなって思って……笑っていれば、体調悪いのも忘れられそうでしょう?」
「それはどうだか……笑いたい時に笑えばいい……無理はするな」
「……うん。….やっぱり優しいね」
「は……?」
「涼、優しい」
「別に……」
そんなところも涼らしい。
時間が過ぎるのは早く、もう羽咲に着いた。
電車を降りるのと同時に、携帯が鳴った。
「ごめんっ、電話出るね」
「あぁ」
「悠くん?」
『音和、今どこ?』
「羽咲の駅だよ」
『迎え行こうか?』
「うーん……ひとりでも帰れるよ?」
そう言うと、涼にかわって、と声をかけられる。のでかわる。
少し離れたところで話す声は聞こえない。
しばらくすると、こちらへ戻ってきた。
「音、帰るぞ」
「え?」
「送ってく」
「でも……」
「嫌?」
「違うっ!違うよ……」
「行くぞ」
「……うんっ」
……やっぱり優しい。
たまに怖いけど、意地悪だけど……







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