届かなくても、
きーさんが、外に逃げ出した。



ということは今の話を聞いていた。



仮面女はただならぬ空気を感じ取ったのか



顔に恐怖を滲ませる。




「どうして…優先しないの?」




生気のこもっていない目が俺を見据える。



暗く色を映し出さない夢叶の目が恐ろしかった。




「ね、ねぇ、早くかえろ…」



「うるせぇ!!お前は黙ってろ!!」





仮面の言葉に涼が口調を荒げる。



仮面女は昇降口からそそくさと出ていった。




「蛍。



お前、今日話すんじゃなかったのか?」



「…あぁ」





修也から言い逃れは出来ない。



言い逃れをした結果は見えている。



俺は正直に答えた。




「なんで、あんな女の話を聞くんだよ。



意味わかんないし。本当に話す気あったのか」



「ある。」




「じゃあ!!」





姫が声を上げた。




「じゃあ、どうして、



一緒にいないの?」



「それは…」





俺は言葉に詰まる。




「中途半端な気持ちで



好きになんかなるんじゃねぇよ。」




夢叶が低い声でそう言う。



男子の喋り方。久しぶりに聞いた。



相当怒らせてしまったようだ。




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