届かなくても、
「けっ蛍くん!!」




仮面は思わず後ずさる。


それも無理はない。


彼の仮面を見つめる目は恐ろしいほどに冷たかった。



彼の体から放たれる殺気は


いつもとは比べ物にならない。



夢叶は彼を一瞥すると去って行った。






「バレないとでもおもってたわけ?お前」




「蛍くん…何言っ
「黙れ!!」







時間が止まったようだった。



彼が怒鳴った。




こんな彼を見たのは初めてだ。





彼はつづけた。






「弁解なんか聞きたくもない。





失せろ」






「ひっ…蛍く「失せろっつってんだろ!!」







恐ろしい剣幕で怒鳴りつけられ





さすがに縮こまったのか




仮面は後ずさりをして走っていった。





彼は私を見て申し訳なさそうな顔をした。









「ごめん。気づけなくて」







謝罪を述べた。






『蛍は何もしてない』







そう言いたいのに





震えが止まらず口が動かない。



彼はそんな私の背中をさすった。




部活はもうとっくに始まっているんだろう。





姫だって今頃怒ってる。





「クラス一緒だし、部活も一緒なのに





何も分かんなかった…ごめん…






もっと早く気づいてれば…」







「そんなこと…」








そこで言葉が止まった。




目から涙が止まらなかった。





大粒の涙が地面に落ちる。





それはとめどなく流れ続け、





彼はその間もずっと背中をさすっていた。





言葉は交わさず、





彼は私が落ち着くまで傍にいてくれた。

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