届かなくても、
彼は一向に口を開かない。
誰とも視線を交わさず俯いてギプスを見つめている。
静寂に包まれる。
修也が口を開いた。
「俺もそこのところは聞きたいよ、蛍。
先生のあの狼狽ぶりで何かあったんだとは分かった。
俺らは見舞いには来てるけど
お前の怪我の原因は知らない。
このまま言わなくたっていずれ分かる。
俺らなら口外する奴はいないし、
話してくれよ」
そう言われても彼は黙ったままだった。
時間が刻一刻と過ぎた。
誰一人として動かない。
やがて、彼は重い口を開いた。
「麗亜にさ、脅されてたんだ」
「どうして?」
「『付き合ってくれれば
お前の仲間に傷はつけない』ってさ。
何が何だか、意味が分からなくて断ったんだ。
そしたら…」
*回想 (蛍side)*
「あなた、事態の重大さ、気づいてないのね」
「どういうことだ」
そのままの意味、と転校生は答える。
そのすぐ後だった。
友達に降ってきた植木鉢が当たりそうになった。
幸い、大事には至らなかったけど
その日の帰り、麗亜が俺を待っていた。
「意味、分かったでしょ。あれ見たんだから」
「分かったよ。でも、なんで俺が…」
「私と付き合えばいいのよ。
簡単じゃない。」
「植木鉢を落としたのはお前かよ」
「私じゃないわ。他の誰かさんよ。」
麗亜は悪魔のような笑みを浮かべる。
友達は大切だし、俺は渋々承諾した。
「ちゃんと、恋人みたいにしてよ。
少しでもおかしな行動とったら
全員皆殺しにしちゃうから。」
「…」
「じゃ、よろしくね。『蛍』」
話は飛ぶけど、俺が落ちたあの日。
俺、落ちたんじゃなくて落とされたの。
もう我慢できなくてさ。
嫌いな奴と一緒にいるなんて嫌だし。
「もう、別れよう。いや、
もう二度と近づかないでくれ」
「いいの?仲間がどうなっても」
「お前にやられるほど弱いヤツじゃないから」
そう言うと麗亜の顔から笑みが消えた。
部屋の温度が一気に下がった気がした。
「そうね…
仲間がダメならあなたよねぇ」
「何言ってんだよ」
「別れてあげてもいいわ。でも…
今まであったこと全て、口外したら
許さないから」
気づいたら、体が宙を舞っていた。
誰とも視線を交わさず俯いてギプスを見つめている。
静寂に包まれる。
修也が口を開いた。
「俺もそこのところは聞きたいよ、蛍。
先生のあの狼狽ぶりで何かあったんだとは分かった。
俺らは見舞いには来てるけど
お前の怪我の原因は知らない。
このまま言わなくたっていずれ分かる。
俺らなら口外する奴はいないし、
話してくれよ」
そう言われても彼は黙ったままだった。
時間が刻一刻と過ぎた。
誰一人として動かない。
やがて、彼は重い口を開いた。
「麗亜にさ、脅されてたんだ」
「どうして?」
「『付き合ってくれれば
お前の仲間に傷はつけない』ってさ。
何が何だか、意味が分からなくて断ったんだ。
そしたら…」
*回想 (蛍side)*
「あなた、事態の重大さ、気づいてないのね」
「どういうことだ」
そのままの意味、と転校生は答える。
そのすぐ後だった。
友達に降ってきた植木鉢が当たりそうになった。
幸い、大事には至らなかったけど
その日の帰り、麗亜が俺を待っていた。
「意味、分かったでしょ。あれ見たんだから」
「分かったよ。でも、なんで俺が…」
「私と付き合えばいいのよ。
簡単じゃない。」
「植木鉢を落としたのはお前かよ」
「私じゃないわ。他の誰かさんよ。」
麗亜は悪魔のような笑みを浮かべる。
友達は大切だし、俺は渋々承諾した。
「ちゃんと、恋人みたいにしてよ。
少しでもおかしな行動とったら
全員皆殺しにしちゃうから。」
「…」
「じゃ、よろしくね。『蛍』」
話は飛ぶけど、俺が落ちたあの日。
俺、落ちたんじゃなくて落とされたの。
もう我慢できなくてさ。
嫌いな奴と一緒にいるなんて嫌だし。
「もう、別れよう。いや、
もう二度と近づかないでくれ」
「いいの?仲間がどうなっても」
「お前にやられるほど弱いヤツじゃないから」
そう言うと麗亜の顔から笑みが消えた。
部屋の温度が一気に下がった気がした。
「そうね…
仲間がダメならあなたよねぇ」
「何言ってんだよ」
「別れてあげてもいいわ。でも…
今まであったこと全て、口外したら
許さないから」
気づいたら、体が宙を舞っていた。