俺様社長に捕らわれて
「やり手なだけあって彼は忙しそうだな」
「そうですね。…社長、この後はいかがなさいますか?長谷川社長にもお会いになりましたし、既に他への挨拶回りも終了しています。そろそろ…」
「あぁ、そうだな。美優、お前はどうする?」
「私も今日はこれで帰ります」
「そうか…」
「では、お車の手配をして来ますので、お待ち下さい」
「あ…田中さん、それは私が…」
「いえ、今日は社長のお嬢様として、このパーティーに参加されていますので、美優さんは社長と一緒にお待ち下さい」
「……ありがとうございます」
そう言うと、田中は車を手配しに行ってしまった。
美優は先程の男……長谷川洋輔に言われた言葉が頭から離れず、帰りの車内でも心ここに在らずといったような状況だった。
そんな様子の美優に、父親である徹也は勿論、田中もがおかしいことに気付いていたが、何と声を掛けて良いのか分からないでいた。
そうこうしているうちに、家に着いてしまったのであった。