その光を、追いかけて。
その時、またもや記録用紙が風に舞う。
ひらひらと仁葉の手をすり抜けた。
「わ、わ、」
うぅ、仁葉ってば本当に学習しないなぁ。
また坂元くんに怒られちゃう事態になってもおかしくない。
「お前な……」
「うわーん、ごめんなさいーっ」
「いい。鈴宮は動くな」
仁葉の代わりに坂元くんが取りに行ってくれる。
呆れているみたいだけど、優しいよね。
ほら、と差し出された用紙。
それを持つ左手と、湿布の貼られた右手。
そして、風で乱れた髪の下。
右耳と頬の境目に僅かに見えたのは、傷跡……?
さっと髪はいつも通りに戻り、見えなくなる。
今のはなんだったのかな。
仁葉の見間違い?
「鈴宮?」
「っ!」
「どうかした?」
用紙を受け取らない仁葉を見てくる坂元くんに、笑顔で首を振る。
「んーん、なんでもない!
ありがとう!」
用紙を持って、仁葉は体育館。
坂元くんはグラウンドへ。
頑張ってねー! と叫んだ仁葉に、坂元くんは片手を挙げて応えてくれた。