雨音はショパンの調べ
貴方は「潮時だな」なんて言ったけれど……。

私は貴方が、私以外にお付き合いをしている女性がいること、ちゃんと知っていたわよ。

珈琲カップにミルクを注ぐ。

ティースプーンでクルクルかき混ぜて、一口飲んで涙が溢れる。


バカね……。
正直に話してくれれば良かったのに。

半年以上も前から、貴方が気づかれないように、気を遣っていること、私は知っていたのに。


ねえ、私はそんなに物わかりの悪い女に思えたのかしら?


あの日の貴方の歪んだ微笑みを思い出し、涙が頬を伝う。


窓を叩く雨音とピアノの音が重なって、切ない調べを奏でてる。


ショパンの「雨だれ」の曲ね。

ショパンが愛する恋人の帰りを待ちながら、弾いていた曲だわ。


タイミングが良すぎるわよ……。

私はフッと溜め息をつき、頬を流れる涙を拭う。
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