イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


素直に話せば邪魔しないって言うから、土曜日に会う事になったって話したのに。
それを聞いた風間は、相手がひとりで来るとは限らない、男を連れてきて車にでも引きずり込まれたらどうするんだ、山に捨てられる気か、それに刃物でも持ってこられたら……と私が不安になるような事をずらずらと並べだし……。
最後に、十分すぎるくらいに怯えさせた頃、不安ならついて行ってやってもいいと告げた。

そんな事を言われれば不安にもなるし、確かに室井さんとは祥太以外の事では関わりがないからどんな子だか分からない。
大人しめな子だったらしく、私の友達に聞いたけれど特に誰と親しかっただとかの話は出てこなかった。

だけど……祥太を見つめる一生懸命な瞳は今でも覚えてるほどだし、風間が言ったような事をする悪い子には思えないのが私の室井さんに対する印象だった。

「で、風間はどこまで来るの?」

何も言わなければ同席してきそうな風間に言うと、顔をしかめられる。

「別に俺がいたところで何の問題もないだろ」
「私はないけど、室井さんは風間には聞いて欲しくないかもしれないじゃない」
「じゃあ、近くまで行ってあっちが本当にひとりで安全だって判断したら帰る」

「それならいいんだろ?」と聞かれて、なんだか申し訳ない気持ちになった。

今日の事は私が望んできてもらった訳じゃないけど、私を心配して休みなのにわざわざついてきてくれた挙句、同席せずに帰すなんて。
大学時代、陰でこっそりと存在していた風間のおっかけの子に知られたら罰金でも取られそうだ。

それに、風間がなんでここまでしてくれるのかを知っているからこそ……余計に申し訳なくなる。
もう、これ以上迷惑なんてかけたくないのに。




< 115 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop