イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


別れないのは、祥太に頼みこまれているにしたって、私の意思だ。
私がついててあげなきゃっていう、昔からの変な義務感だって、私が勝手に感じているだけであって祥太のせいでもなんでもない。

全部、納得して許して、付き合ってるのに……。
昨日はなぜだか、涙が堰をきったように溢れ出し、目をぐいぐいこすっても止まらなくて。

「ごめん」って何度も謝りながら頬を伝う涙を拭いている手を風間が掴んだのは、私が六回目くらいのごめんを言った時だった。

それぞれ掴まれた両手首に驚いた私の視界に映ったのは、真剣な顔をした風間の姿で。
視界は涙でぼやけていたけれど、目に溜まっていた涙が粒となって頬を流れ落ちると、いつの間にか目の前にいた風間の表情がしっかりと見えた。

もう我慢しなくちゃという気持ちもなくなってしまっていて。
私はただポロポロと涙を流しながら風間をぼんやりと眺めて、風間も、私をじっと見つめていて……しばらくそうした後、風間がツラそうに顔を歪めた。

そして。
「俺が浮気相手になってやろうか」と告げた。



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