イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「実莉(みのり)……ちゃんとこっち見ろ」

憎たらしい、余裕さえ窺える微笑みにストレートパンチをお見舞いしたい気持ちになりながら、思いきり睨みつける。
そして……妖美に微笑まれたのを合図に、体温が混じり合った。



立花実莉、二十四歳。
車の販売店で受付事務を任されて今年で三年目になる。

十人弱の営業と、同じく十人弱の整備士、そして私を含む受付ふたりで回す販売店の仕事は、なかなか快適でメンバー的にも気に入っている。

新しくできたばかりの支店で建物が真新しいというのも理由のひとつではあるかもしれない。
お客様のどういった心理を狙ったのかは分からないけど、天井がすごく高くて気持ちがいい。

白を基調にしたカラーリングも気に入っている。

昼休みに更衣室のロッカーを開けると、鞄の中にあるスマホが、未読メールがある事を青い光で教えていた。

『今日、仕事終わったら飯行こう。いつもの店で待ってるから』という内容のメールは、私の都合なんてまったく考慮してくれていないけれど。
こんなのいつもの事だし、気にも留めない。
でも、続いた文章には、動揺が隠せなかった。

『そういえば昨日、寝るの早かった? 電話したんだけど、実莉、出なかったから。
あとさ、風間も声かけてみてよ。三人で飯とか久しぶりだし』

メール送信者は、奥村祥太。高校三年生の頃から付き合っている彼氏で、元は中学からの同級生で友達だ。


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