イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「ところで実莉先輩、今日暇ですか? 夜、ご飯でも食べに行きませんか? ふたりで」

ふたりで、の部分をやけに強調しながら笑顔を向ける村田さんに、苦笑いを浮かべる。
ただ男嫌いってだけならいいんだけど、村田さんはどうやら女の子を好きらしいから反応に困ってしまう。
どこまで本気か分からなくて。

後輩としてはすごくいい子だし、懐いてくれていて可愛いとも思う。
けれど彼女がもしも私をそういう対象に見ていた場合を考えると、色々と安易に返事が出来ず曖昧に誤魔化してしまう事も少なくない。

「今日はちょっと」
「予定あるんですか?」
「ううん。昨日も外食だったから連日は控えたいなって思って」
「昨日? ダメ彼氏とですか?」

受付の仕事は、来店客の対応のみが仕事ではなく、営業が持って行くパンフレットを袋詰めしたり電話対応したりと雑用が多いから、あまり暇な時間はない。

お客様が小さなお子さんを連れて来たりすれば、お客様が営業と話している間はそのお子さんと一緒に遊んだり、そういう事も最近では多いし。

それでも、少しくらいの雑談時間はあるわけで。
それが一年以上も積み重なれば、お互いの恋愛事情だとかにも話題は及んでいき、聞かれるまま素直に答えた結果、祥太はさくっとダメ彼氏と判定されたというわけだ。

しかも結構序盤の段階で。


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